相続税の大まかな計算1段階目

2020年8月29日

相続の基礎(3)

大田区の蒲田駅にあるシトラスベル税理士事務所から相続税の大まかな計算シリーズの第1段階目の解説となります。

相続税の納税義務者と課税財産の範囲

相続税の納税義務者は、相続や遺贈(死因贈与を含む。)により財産を取得した個人です。

納税義務者は、日本に住所がある者とない人に区分されます。
日本に住所がない人については、さらに日本国籍を有するかどうかにより区分されます。
これらの納税義務者の区分ごとの相続税の対象となる財産の範囲は異なります。

納税義務者の区分により、課税対象となる財産の範囲が異なりますが、それぞれの財産がどこに所在するかの判断は財産の種類ごとに定められています。納税義務者の区分により取扱いが異なるのは、課税対象となる財産の範囲だけではありません。債務控除の対象や未成年者控除、障害者控除も納税義務者の区分により取扱いが異なります。こまかいところは別途解説しますが基礎編ではここまでで大丈夫です。

相続税の納税地

相続税の納税地は被相続人が亡くなったときにあった住所地となります。ただし、被相続人が日本以外に居住していた場合には、相続税の納税義務者の住所地が納税地となります。

この場合に相続税の納税義務者も日本に居住していないときは、納税地を定めるか、あるいは国税庁長官が指定した場所が納税地となります。

相続税の計算の仕組み

相続税の計算は大きく3段階に分けて考えるとよいでしょう。まずは大枠として各段階を解説します。

1段階目

まず1段階目では、相続税の対象となる財産の価額を計算します。被相続人から取得したプラスの財産から、引き継いだ債務などのマイナスの財産を差し引きして正味財産の金額を計算します。

被相続人が亡くなったときに所有していた財産は、原則として、すべて相続税の対象となります。また遺族が受け取る死亡保険金や死亡退職金も相続税の対象となります。

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産がある場合や被相続人から相続の開始前3年以内に贈与された財産がある場合には、その贈与財産は相続財産に持ち戻すというルールになっています。反対に相続税の対象にならない非課税財産、借入金など被相続人の債務、葬式にかかった費用などはマイナスの財産として、相続財産から差し引くことができます。

プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて計算した課税価格を合計した金額を課税価格の合計額といいます。1段階目はこれで終了です。

2段階

2段階目では1段階目で計算した課税価格の合計額に対して課される相続税の合計額を計算します。相続税は、財産を取得した人が負担すべき税額を取得者ごとに計算する前にやることがあります。

まず被相続人の正味の財産全体にかかる相続税の総額を計算した後、それを相続人に配分することになっています。また、相続税には基礎控除額という財産額のうち一定額までは相続税がかからないという枠があります。財産の額がこの基礎控除額以下である場合には、相続税はかかりません。財産の額が基礎控除額を超える場合にはその超える部分の金額を各相続人が法定相続分に従って取得したものと仮に計算します。

その後それぞれの取得金額に相続税特有の税率を適用し税額を計算します。これらを合計したものが相続税の総額です。

3段階目

2段階目で計算した相続税の総額を、相続や遺贈により財産を取得した人ごとにその取得した正味財産の割合で按分し、各人が納付すべき税額を計算します。相続税の計算は、財産を取得した人それぞれの事情に合わせて税金を負担する調整が行われます。

たとえば財産をもらった人が配偶者や未成年者、あるいは障害者というときには税額が軽減されます。反対に叔父や叔母、兄弟などから財産を受け継ぐと相続税が加算されます。相続等により財産を取得した人は、これらの調整を終えた後の税額を国に納めることになります。

課税価格の合計額の計算

ここからは1段階目をすこし掘り下げて解説をします。まず最初に亡くなった人の財産を把握し評価して財産を取得した人ごとに相続税の対象となる正味財産の金額を1段階目で確定します。

相続税の対象となる財産

被相続人が死亡の時において所有していた財産のうち経済的価値のある財産はすべて相続税の計算の対象となります。
相続税の対象となる財産は大きく分けると本来の相続財産と、みなし相続財産の2つです。

本来の相続財産

本来の相続財産は民法の規定に従って相続により取得する財産をいいます。相続財産であるかどうかは、登記の有無や名義は関係ありません。実質的に被相続人が所有していたものはすべて相続財産となります。

形式的に息子(娘)名義でつくった通帳を実質的に被相続人が使用していた場合は名義預金といって息子(娘)名義であっても相続財産にくみこまれます。

みなし相続財産

民法上の相続財産ではなくても、実質的には相続により財産を取得するのと同じ経済的効果があるものについては、相続で取得したものとみなして相続税が課税されることとされています。
このような財産をみなし相続財産といいます。代表的なものは次のようなものです。

  • 死亡保険金

    被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金のうち、被相続人が保険料を負担していた部分はみなし相続財産として相続税の対象となります。
    一時金で支払われる保険金のほか、年金の形で支払われるものもみなし相続財産となります。

  • 死亡退職金

    被相続人の死亡により受け取った退職手当金や功労金などで、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産として相続税の対象となります。一時金で支払われる退職手当金などはもちろん、年金の形で支払われるものも含まれます。
    なお、死亡後3年経過した後に支給が確定した退職手当金などは、受け取った遺族の一時所得として所得税の対象となります。

生命保険契約に関する権利

被相続人以外の人が被保険者となっている生命保険契約は相続が発生しても死亡保険金は支払われません。しかし、この保険契約を取得した人が解約をすれば解約返戻金を受け取ることができますので、実質的にはお金にかえることができる財産ともいえます。そのため被相続人以外の人が被保険者となっている生命保険契約で被相続人が保険料を負担していたものは、その生命保険契約に関する権利のうち、被相続人が保険料を負担していた部分については相続税の計算に含めなければいけません。

非課税財産

相続税の計算では基本的に引き継いだ財産はすべて課税の対象となります。しかしその財産の中でも社会的な配慮や国民感情等から相続税の対象とすることが適当でないものについては非課税財産として相続財産から除外することとしています。

仏壇、仏具、墓地など

仏壇や仏具、墓地など、日常礼拝で使うものは相続財産から除かれます。しかし、礼拝等ではなく投資目的で所有していた商品や骨とう品は非課税財産にはあたりません。

死亡保険金のうち非課税限度額までの金額

被相続人の死亡により取得した生命保険契約や損害保険契約の死亡保険金で、被相続人が保険料を負担していた部分はみなし相続財産として相続税の対象となります。この相続財産とみなされた死亡保険金で、相続人が受け取った金額のうち、下記の非課税限度額までの金額は相続税の対象から差し引くことができます。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

相続対策を検討している人で死亡保険金に加入していない場合は検討するべきでしょう。相続人が妻、長男、長女の3人の場合で現金が1,500万円あれば相続税の計算の基礎となる財産の価格が1,500万円減るので節税につながります。支払った1,500万円の現金は手元からなくなりますが相続が発生した後は保険金として戻ってきます。上述の通り、みなし相続財産として相続財産に戻されますがこの非課税の制度によって相続財産から除外されるので結果的に節税につながるというわけです。

ただしこの金額は非課税限度額の総額です。

複数の相続人が死亡保険金を取得したときに、各相続人が適用できる限度額はこの非課税限度額の総額を各相続人が取得した死亡保険金の額で按分した金額です。また、相続の放棄をした人は相続人でないことから非課税の適用を受けることはできません。

死亡退職金、功労金のうち非課税限度額までの金額

被相続人の死亡によって受け取った退職手当金などで被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものはみなし相続財産となります。この相続財産とみなされた死亡退職金で、相続人が受け取った金額のうち、下記の非課税限度額までの金額は非課税となります。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

この金額は非課税限度額の総額であり、複数の相続人が取得した場合の按分計算や法定相続人の数に関する注意点は死亡保険金の場合と同じです。

弔慰金のうち非課税限度額までの金額

被相続人が勤務していた会社から遺族が受け取る弔慰金、葬祭料、花輪代などは、下記の金額まで相続税の対象となりません。

業務上の死亡のとき・・・死亡時の給与×3年分
業務上の死亡以外・・・・死亡時の給与×6ヶ月分

受け取った弔慰金などがこの金額を超える場合には、死亡退職金として取り扱われます。

国、地方公共団体等へ寄附した一定の財産

相続で財産を取得した人がその財産を相続税の申告期限までに国や地方公共団体、教育・科学の振興など公益の増進に著しく寄与する特定の団体に贈与した場合には相続税の対象となりません。

債務

相続税は不動産や現預金などの被相続人のプラスの財産から債務を差し引いた後の正味財産に課税される税金です。したがって財産を取得した人が債務を引き継いでいる場合には相続税の計算上その債務や葬式費用を課税財産から差し引くことができます。

相続財産から差し引くことができる債務は相続開始時点で確定しているものに限られます。例外として被相続人に課されるはずだった税金で死亡後に相続人が納付することになった未払税金は未確定だったとしても差し引くことができます。

控除できるものの例は借入金、医療費の未払い、買掛金など事業で支払いが済んでいなかった債務が代表的なものです。控除できないものの例は保証債務、相続にかかる税理士費用や弁護士費用、墓地を購入した未払金といったものです。

葬式費用

相続人が葬式にかかった費用を負担した場合には課税財産から差し引くことができます。本葬の費用、通夜の費用、埋葬、火葬、納骨費用、葬式の前後に生じた費用などが主なものになります。

控除できないものとしては初七日や四十九日などの法要費用、香典返戻費用などです。

相続開始前3年以内の贈与財産

相続により財産を取得した人が、相続がおこる3年前以内に、被相続人からの贈与で財産を取得したことがある場合には、その贈与財産を相続財産に加算します。贈与税の配偶者控除の適用を受けた金額や直系尊属から贈与を受けた住宅取得資金のうち非課税の適用を受けた金額は加算する必要はありません。

しかし教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用を受けた金額のうち一定の部分については加算する必要があります。贈与された財産を相続財産に加える時の評価額は相続がおこった時ではなく贈与した時の評価額になります。

贈与があった時に贈与税をおさめていた場合であってもその贈与税額は相続税額から控除されるため相続税と贈与税が二重に課税されるという問題は発生しません。

相続時精算課税制度による贈与財産

相続人が被相続人からの贈与について相続時精算課税という制度を選択していた場合には、その贈与財産を相続財産にプラスして相続税を計算します。

小規模宅地等の課税価格の計算の特例

被相続人の自宅やその土地、事業で使っていた宅地のうち一定の要件を満たすものには一定の額を課税価格から控除できる特例があります。

事業用宅地については400㎡、住居用宅地については330㎡までの部分を評価額の80%を課税価格から控除できる特例があります。よく勘違いされますが80%になるのではなく80%減の20%となるということです。ほかにも不動産貸付用の宅地については200㎡までの部分に評価額の50%を課税価格から控除できます。


今回もシトラスベル税理士事務所から大まかな計算の第1段階目の解説を致しました。自分で申告をするのは難しそうというかたは、シトラスベル税理士事務所におまかせしていただければ節税の提案、有利不利の選択、申告書の作成から申告等々すべて安心していただけますのでお気軽にお問い合わせしてください。