2020年9月24日
前回は相続時精算課税制度について解説をいたしました、今回からは事業承継税制についての解説を東京都大田区蒲田にあるシトラスベル税理士事務所からお届けいたします。
中小企業の経営者の高齢化が進んでいる近年、中小企業の経営者に相続が発生した場合に企業が行う事業そのものの継続に支障が生じることがないようにすることが日本経済の大きな課題となっていました。そこで中小企業の事業承継の円滑化を図ることを目的として中小企業経営承継円滑化法が制定されました。
この法律に基づき非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度が創設されました。この制度は一定の未上場会社のオーナー経営者から後継者が自社株を相続(または贈与)により取得する場合、事業の継続等の要件を満たすことを条件に相続税の一部(または贈与税の全部)の納税を猶予し、その後に要件を満たした場合には最終的に猶予税額が免除されるという制度です。
事業承継を円滑に進めるためには後継者に経営権を集中させることが不可欠ですがオーナー経営者から後継者が議決権株式の全部を引き継ぐには多額の相続税(または贈与税)がかかります。そこで一定の要件のもとで相続税(または贈与税)の納税を猶予し次の後継者に対する事業承継まで無事に経営責任を果たした場合には猶予税額そのものを免除するというものです。
中小企業の経営者にとって自社株の相続税負担は優良企業であればあるほど深刻な問題ですからこの制度は後継者の自社株の相続税負担軽減策として非常に期待されています。しかしながら適用要件を満たさないこととなった場合には、猶予された税額に加えて利子税の納付も求められることになるなど、納税猶予の適用を受けた後継者は会社経営を行うにあたりさまざまな制約も課されることになります。したがって適用後に課される要件等をクリアできるどうかを含めて十分に検討する必要があります。
対象となる会社は次のような会社で一定の要件を満たす会社です。
一例として製造業・建設業でゴム製品製造業は資本金3億円以下、従業員数900人以下、同業でゴム製品製造業以外の製造業等は資本金3億以下、従業員数300人以下だったり、卸売業は資本金1億円以下、従業員数100人以下だったり業種と従業員数によって異なりますが、通常イメージする大企業ではない中小企業と考えていただいて構いません。
以下のいずれにも該当しないことが必要です。
(イ)上場会社
(ロ)風俗営業会社
(ハ)資産保有型会社または資産運用型会社
(ニ)総収入金額がない会社、常時使用する従業員数がいない会社
その会社およびその会社の同族関係者が上場会社、風俗営業会社、大会社に該当する会社の議決権を50%超所有している場合にも適用が受けられません。
後継者である相続人等が相続等により非上場会社の株式等を取得し事業継続等一定の要件を満たす場合には当該株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が、その後継者の死亡等の日まで猶予されます。
この制度の適用を受ける場合には相続開始の日の翌日から8か月以内に適用要件を満たしていることについて都道府県知事に認定申請書を提出し認定を受ける必要があります。
後継者である相続人等は次に掲げるすべての要件を満たす必要があります。
(イ)認定承継会社の非上場株式等を相続等により取得した個人であること
(ロ)相続開始日から5か月経過後において当該会社の代表者であること
(ハ)相続開始時において後継者と同族関係者で総議決権数の50%超を保有し、かつ同族内で筆頭株主であること
(ニ)相続開始直前において当該会社の役員であること
先代経営者である被相続人は以下の要件をすべて満たしている必要があります。
(イ)相続開始前において被相続人と同族関係者で総議決権数の50%超を保有し、かつ同族内で筆頭株主であり、さらに会社の代表者であったこと
(ロ)相続開始直前において被相続人と同族関係者で総議決権数の50%超を保有し、かつ同族内で筆頭株主であったこと
また、先代経営者と併せて先代経営者以外の複数の株主からの相続または遺贈も納税猶予の対象となります。
先代経営者以外の株主からの相続または遺贈については先代経営者からの承継の日以後、その承継に係る都道府県知事の認定の有効期限までに申告期限が到来する相続または遺贈である必要があります。
この制度の適用を受ける場合には相続税の申告期限までに制度の適用を受ける旨を記載した相続税申告書および一定の書類を提出するとともに納税が猶予される相続税額および利子税の額に見合う担保を提供しなければなりません。
この担保提供については、制度の適用を受ける非上場株式等の全部を担保として提供すれば、納税猶予額および利子税の額に見合う担保提供があったものとみなされます。
また申告期限までに適用を受けようとする非上場株式等について遺産分割が成立していない場合には、適用を受けることはできません。
先代経営者から相続した非上場株式等のうち、後継者本人がすでに保有していた非上場株式等を含めて後継者の議決権割合が3分の2に達するまでの部分に係る課税価格の80%に対応する相続税について、納税が猶予されます。
例えば、発行済株式数600株、後継者はすでに60株所有しており、先代経営者から540株を後継者が相続した場合に、納税猶予の対象となる株式数は以下のようになります。
600株×2/3=400株
すでに60株所有しているので相続税の納税猶予の対象は400-60で340株となります。
この相続税の納税猶予および免除制度は、そもそも後継者が事業を継続することを条件に認められているものです。したがって、相続税申告期限の翌日からの5年間は、経営承継期間と定められ申告期限の翌日から1年ごとに税務署長に継続届出書を提出することと都道府県知事に事業継続報告書を提出することが義務づけられます。提出を怠った場合や打ち切り事由に該当することが判明した場合には納税猶予は打ち切られてしまうことになり猶予税額全額と利子税を納付しなければならないことになりますので注意が必要です。
経営承継期間中に後継者が守らなければならない主な要件を以下にご紹介します。
経営承継期間を経過した後は以後猶予税額が免除されるまで、株式保有期聞が続きます。すなわち後継者は、猶予税額免除となるまで納税猶予の対象となった非上場株式等を保有し続けること、資産保有型会社等に該当しないこと等の要件を引き続き満たし続ける必要があります。また経営承継期間経過後からは都道府県知事への報告義務はなくなり経営承継期間末日の翌日から3年ごとに税務署長に継続届出書を提出しなければなりません。
提出を怠った場合や要件を満たさないこととなった場合にはやはり納税猶予打ち切りとなってしまいます。
相続税の納税猶予および免除制度の適用を受けた場合において、次に掲げる事由に該当することとなった場合には一定の期間内に免除届出書または免除申請書を所轄税務署長に提出することにより猶予税額の全部または一部が免除されることとなります。
相続税の納税猶予および免除制度の適用を受けた場合において次に掲げる事由に該当することとなった場合には、納税猶予は打ち切られ猶予されていた相続税額の全部または一部と申告期限の翌日から納税猶予期限までの期間に相当する利子税を納付しなければなりません。
いかがだったでしょうか?専門用語が多く難しいですが事業承継は日本の経済の課題となっておりますので少しずつ理解できればいいのかなと思います。
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