相続時精算課税制度

2020年9月21日

相続時精算課税制度

今回は大田区の蒲田にあるシトラスベル税理士事務所から相続時精算課税制度の徹底解説を致します。

相続時精算課税制度は祖父母や親から子や孫へ行う生前贈与に関しては、基本的な贈与にくらべて贈与時の税負担を軽くする代わりに、相続があったときは贈与財産も含めて相続税を計算し払った贈与税は相続税から差し引いて精算するという制度です。

高齢化が進む中、高齢者の保有する資産を若い世代に早めに移転するという観点から導入されました。60歳以上の祖父母や親から20歳以上の子や孫への贈与について、贈与金額2,500万円までは贈与税はかかりません。2,500万円を上回る贈与について贈与税率は一律20%とし、祖父母や親が亡くなったときには贈与された財産を相続財産に加えて相続税額を計算します。その際すでに払った贈与税があれば、相続税額から差し引き、相続税額より支払った贈与税額が多ければ還付を受けられます。

民法改正により令和4年4月から成年年齢が引き下げられますので令和4年4月1日から20歳が18歳となります。例えば1億円の財産を保有している父がそのうち4,000万円を子に贈与し贈与時に子が相続時精算課税を選択したとします。財産をもらった子が支払う贈与税は2,500万円まではゼロ、それを超える部分1,500万円については一律20%の税率が適用されますので支払う税額は300万円となります。しかし通常の暦年課税で計算すると4,000万円の贈与に対する贈与税は1,530万円ですから、相続時精算課税を選択するとかなり低い税負担で済むこととなります。

相続時精算課税を選択した場合、将来父の相続が発生したときには、贈与された4,000万円を相続財産に加えて相続税を計算しますので相続税の対象となる財産は1億円となりその場合の相続税額は1,220万円です。子が実際に支払う相続税はこの1,220万円から贈与時に支払った贈与税300万円を差し引いた残りの920万円となります。

もし父が4,000万円の贈与をしなかった場合はどうでしょう。そのときは相続発生時に父の相続財産1億円について子は1,220万円の相続税を支払うことになりますので、結果として相続時精算課税を選択して贈与を行った場合の相続税額および贈与税額の合計額と、支払う税額は同額となります。

このように贈与時に相続時精算課税を選択すると贈与時の税負担が通常の贈与に比べて軽く、しかも贈与財産の価額が贈与時と相続時で変動がない場合には支払う贈与税と将来の相続税の合計額が贈与をしなかった場合の将来の相続税額と等しくなりますので、相続まで待たずに子や孫へ早めの資産移転をすることができます。

なお平成29年度税制改正で納税猶予の適用を受ける自社株式の贈与についても相続時精算課税制度の適用を受けることができるようになり、さらに平成30年度税制改正では、直系尊属でない60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者への自社株式の贈与についても一定の要件を満たせば相続時精算課税制度の対象になっています。また令和元年度税制改正では個人の事業用資産についての納税猶予制度が設けられましたがこちらも相続時精算課税制度の選択が可能です。

相続時精算課税の適用条件

相続時精算課税の適用を受けることができるのは60歳以上の祖父母や親から20歳以上の子や孫への贈与に限られます。

年齢の判定は贈与した年の1月1日で行います。

相続時精算課税の選択

相続時精算課税は選択制です。

贈与を受けた人は祖父母や親からの贈与について相続時精算課税を選択するかそれとも従来の暦年課税により贈与税を支払うかの選択をすることができます。ただし一度相続時精算課税を選択したらその贈与者からの贈与は以後ずっと相続時精算課税によることとなり、その後に暦年課税に変更することはできません。この選択は贈与者ごとに行うことが可能ですので、父からの贈与は相続時精算課税を選択し、母からの贈与については暦年課税の適用を受けることも可能です。

また、祖父母や親以外からの贈与については相続時精算課税の選択ができませんので従来の暦年課税によることとなります。

贈与財産の種類

相続時精算課税を選択して贈与を受ける財産の種類には制限がありません。現金、不動産、株式など何でもOKです。ただしどのような財産を相続時精算課税制度により贈与するかにより相続税の計算上、有利になったり不利になったりすることがあります。

贈与税の計算と申告

贈与金額が累計で2,500万円となるまでは贈与税がかかりません。また贈与する回数や期間について制約はありません。ただし相続時精算課税を選択した場合はその年の贈与金額がまだ累計で2,500万円に達していないため贈与税がゼロとなる場合であっても贈与税申告は必要です。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告書を税務署に提出しなければなりません。相続時精算課税の適用を受ける最初の贈与税の申告の際には相続時精算課税選択届出書に受贈者の戸籍や贈与者の住民票等の書類をつけて、贈与税の申告書とともに提出します。提出がない場合には相続時精算課税の適用を受けられませんので暦年課税となり110万円の基礎控除後10%~55%の税率で贈与税がかかります。また相続時精算課税の適用を受けた翌年以降に贈与を受け期限内に申告書を提出しない場合には、2,500万円の特別控除を使うことができず贈与金額の20%の贈与税を納めることになります。

相続時精算課税と暦年課税の比較

相続時精算課税は選択により適用を受けられますがそれではどのような場合に使ったら有利なのかを解説します。

将来贈与者に相続が発生した場合相続税の心配がないケース

贈与者に相続が発生した場合に相続税の負担が生じないと思われる場合は、子や孫にまとまった金額を贈与をする際に2,500万円まで非課税で贈与ができる相続時精算課税をどんどん活用すべきといえます。ただし従来は相続税がかかるほどの財産を遺して亡くなられる方は100人のうち5人弱の割合でしたが平成27年1月1日以降発生した相続からは、基礎控除の金額が引き下げられ、以前の6割となったことにより課税割合は増加しています。

贈与をする場合には将来自分が亡くなった時に相続税がかかるかどうかよく検討して暦年課税の適用を受けるかまたは相続時精算課税を選択するか判断するべきでしょう。一度相続時精算課税を選択してしまうとその贈与者からの贈与については暦年課税の適用を受けることができなくなりますので注意が必要です。

将来贈与者に相続が発生した場合相続税の心配があるケース

暦年課税には次のような特徴があり相続税の心配があるご家庭にあっては相続時精算課税を選択するより有利になるケースがあります。

  1. 1人年間110万円の基礎控除が使える。
  2. 相続開始前3年以内の贈与財産以外は相続財産に持ち戻しされない。
  3. 贈与のつど10%から55%の税率で贈与税を計算する

例えば財産が3億5,000万円ある父が子2人にそれぞれ2,500万円ずつ合計5,000万円を生前に贈与をするケースで考えてみましょう。

まず相続税の心配がないケースのように贈与時に子2人が相続時精算課税を選択すると、贈与財産はそれぞれ特別控除額以下ですから、支払うべき贈与税額はゼロとなります。その後父に相続が発生したときの相続税は贈与した財産の5,000万円と残った相続財産3億円の合計3億5,000万円、これにかかる相続税額は8,920万円になります。

一方、同じように子に2,500万円の贈与をするのにあたって相続税の心配があるケースのように毎年250万円ずつ10年にわたって贈与を行い子が暦年課税を使ったらどうでしょう。子はそれぞれ毎年(250万円-110万円)×10%=14万円ずつの贈与税を10年にわたって支払いますので贈与税の合計額は14万円×2人×10年=280万円となります。その後、父の相続にかかる相続税は残った相続財産3億円に対して6,920万円となりますので、相続税、贈与税合計で税負担は7,200万円です。

このケースでは暦年課税の方が税額で1,720万円(8,920万円-7,200万円)有利となります。

このように、相続時精算課税を選択した場合には贈与した財産がすべて相続財産に加算されるのに対して暦年課税を使った場合には相続開始前3年以内に相続人等に対してなされた贈与以外は加算されず相続財産から完全に切り離されます。したがって贈与者が将来死亡した際に相続税負担が生じる場合には暦年課税を使って、1人あたり1年間110万円の基礎控除額を活用し実際に相続が発生したときに適用される相続税率より低い税率で長期にわたり少しずつ贈与を続けた方が結果合計で支払う税額が少なくなります。

相続時精算課税を選択して贈与すると効果的な財産

どのような場合に相続時精算課税を活用すればよいのかをこれから解説していきます。結論としては将来の値上がりが予想される財産については、相続時精算課税を選択して贈与をしておくと相続税の軽減となります。相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は贈与時の評価額で相続税の計算に取り込まれることになることがポイントです。

例えば未上場の会社を経営している父の財産が贈与時点ではその会社の株式3億円と預金自宅などで4億円合計7億円であったとします。
父が後継者である子に株式3億円を贈与し子は相続時精算課税の選択をしました。この場合、3億円から2500万円の特別控除額を差し引き残りの2億7,500万円について20%の税金がかかりますので、支払うべき贈与税は5,500万円となります。その後この会社の業績が順調に伸び父の相続時には贈与された株式の価額が8億円まで上昇したケースを考えてみます。

父の相続税を計算する場合には贈与時に子が相続時精算課税を選択していますので贈与された株式が相続財産に持ち戻しされますがこのときの価額は相続時の価額ではなく贈与時の価額です。結果、相続財産は株式3億円とその他の財産4億円の合計7億円となりこの場合の相続税額は2億9,320万円ですので、すでに支払い済みの贈与税5,500万円を差し引き、納付すべき相続税額は2億3,820万円となります。

もし父がこの会社の株式を贈与しないで死亡したとすると一体相続税はどうなるでしょうか。父が死亡したときの相続財産は株式8億円とその他の財産4億円合計12億円となりますので子の納付すべき相続税額は5億6,820万円となってしまいます。このケースでは相続時精算課税を使って生前に株式を贈与したことによりその後の株式値上がり益5億円にかかる相続税額分2億7,500万円が節約できたことになります。

このように、将来の値上がりが予想される財産については、相続時精算課税を選択して贈与をしておくと相続税の軽減となります。逆に将来価値が下がるような財産であれば、相続時まで待って財産の移転を考える方が有利ということがいえます。その他所有していることにより高い収益を上げる賃貸不動産等も相続時精算課税を選択して早めの移転を行うことによりその収益が子に帰属するので贈与者の財産の増加を食い止めまたその収益をもって将来の子の相続税納税財源にすることが可能となります。

相続時精算課税選択の注意点

ある程度まとまった金額の財産を贈与した場合に贈与税の負担が軽くてすむのが相続時精算課税です。しかし誰がいくらの財産をもらったかという情報が相続時に他の相続人にも知らされることとなりますので、遺産分割への配慮が必要となります。贈与を受けた相続人と受けなかった相続人の問で争いとなる可能性もないとはいえません。将来の遺産分割の方向性も考えてこの制度を活用していただくことが、相続を争いのもとにしないための秘訣となるでしょう。また贈与を受けた人が贈与者より先に亡くなってしまった場合にはその贈与を受けた人の相続人が相続時精算課税に係る納税の義務を承継します。

例えば次のケースで子が父から贈与を受け相続時精算課税を選択したとします。子が父より先に亡くなってしまうとその後父の相続発生時において本来であれば子が支払うべき相続税は子の相続人である配偶者および母が法定相続分に応じて引き継ぐこととなります(ただし父本人は引き継がない。)。配偶者は父からみて相続人ではありませんから遺言がない限り父の相続時に財産を取得することはありませんが相続時精算課税に係る納税義務だけは発生することになります。

また平成27年1月1日より相続時精算課税制度の受贈者の範囲に20歳以上の孫が加わっていますが、代襲相続人でない孫が受贈者となる場合は、贈与者である祖父母に相続が発生した場合、孫の負担する相続税は「相続税の2割加算の対象となるため通常に計算した金額の1,2倍の負担となります。代襲相続人でない孫は通常遺言がない限り相続時に祖父母の財産を取得することがないので相続時精算課税制度により祖父母から贈与を受ける場合には将来の相続税負担を見越して、納税資金を確保しておく必要があるでしょう。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例

相続時精算課税の特例として住宅取得等資金の贈与を受ける場合には贈与者が60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。この特例は令和3年12月31日までの贈与に限り適用があります。

適用対象者

贈与者は祖父母または父母となり、受贈者は20歳以上の直系卑属である推定相続人となります。相続時精算課税の特例ですので祖父母や父母からの贈与に限られますが、贈与者には年齢制限がありません。年齢の判定は贈与する年の1月1日で判定します。

適用要件

  1. 平成15年1月1日から令和3年12月31日までの現金贈与であること
  2. 下記の住宅取得等資金としての現金贈与であること
    (イ)新築住宅の建築取得のための資金
    (ロ)住宅の新築に先行してその敷地を取得するための資金
    (ハ)一定の中古住宅の取得のための資金
    (ニ)工事費用100万円以上の定の増改築のための資金
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに定の住宅を建築、取得、増改築すること
  4. その後遅滞なく受贈者である子がその住宅に居住すること

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度

相続時精算課税制度を選択する場合も、暦年課税の場合と同じように、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の適用を受けることができます。

制度の内容は暦年課税の場合と同様で、相続時精算課税の適用を受けている者が合計所得金額2,000万円以下である場合にその者の特別贈与者である直系尊属から、一定の要件を満たすマイホームの購入資金・増改築資金の贈与を受けた場合には2,500万円の特別控除とは別に住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の適用を受けることができます。

つまり相続時精算課税との重複適用が可能ということです。

非課税となる贈与金額は住宅取得の契約日に応じて異なります。住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けたマイホームの購入資金・増改築資金については、相続税の計算上、相続財産に持ち戻す必要はありません。なお、住宅取得等資金の相続時精算課税の特例を併用することで、60歳未満の祖父母や父母からの贈与についても住宅取得等資金の贈与税の非課税と相続時精算課税を同時に受けることができます。


今回は大田区の蒲田で営業をしているシトラスベル税理士事務所から相続時精算課税制度について解説をさせていただきました。

みなさんユザワヤはご存知でしょうか?実はユザワヤは大田区の蒲田に1号店があります。
もともとは湯沢屋という毛糸のお店だったそうです。

シトラスベル税理士事務所はユザワヤがある蒲田駅で営業をしておりますのでお越しの際は覗いてみてはいかがでしょうか?